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森永ビヒダス

=========== 維新国際特許事務所メルマガ 2013/09/02 Vol.68 ==========

編集&発行:維新国際特許事務所 https://www.iipi.jp

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文章の最後にかっこ書きで一文字記載されています。

        メルマガ編集人:  維新国際特許事務所 弁理士 井上 浩
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 子供の頃、カップアイスで一番おいしいところは、蓋の裏面にへばりついている
アイスと信じて(単に卑しいだけで)、いつもまず蓋を開けてきれいに舐めてから
カップに入っているアイスクリームを食べていました。
 そんな経験なかったですか?

 まあ、実は今でもそれは続いていて、毎朝カップタイプのダノンビオヨーグルトを
食べるときには、蓋裏のヨーグルトを舐めてからカップの中のヨーグルトを食べる
ようにしています。

 ところが、ダノンビオの他に、森永ビヒダスのカップタイプのヨーグルトも食べてい
るのですが、ビヒダスはいつも蓋裏がきれいで全くヨーグルトが付着していません。
私としては一番おいしいところに手が届かないもどかしさを感じていたのですが、
最近その謎が判明しました。ビヒダスのパッケージ(蓋表)には「フタにヨーグルトが
付きにくい!」と書いてあるではないですか。

 職業柄、これは特許臭いと思い早速調べてみたところ、森永乳業のホームページ
に東洋アルミニウムとの共同開発で「蓮の葉の微細構造をシール面側に形成して
撥水性を実現しました」とあります。どうもそのような撥水構造シートを開発してヨーグ
ルトの蓋裏に採用したようです。

 次に特許出願を調査したところ、森永乳業と東洋アルミニウムとの共同出願はなく、
森永が「カップ状容器の蓋体及びその製造方法」(特許第4878650号)、東洋アルミ
ニウムが「積層体及び包装材料」(特開2011-93315号)として特許出願していることも
判明しました。 これらの出願から、この撥水構造は蓋裏に樹脂の膜を作り、その膜
の表面に疏水性(水と混ざり難い、水に溶けにくい)の微細粒子をちりばめることで
撥水性を発揮させていることがわかりました。

 このような材料はカップタイプのヨーグルトの蓋に使われるだけでなく、レトルト食品
の包装にも使われると便利だと思います。例えば、レトルトのカレーで、私は一番最後
に出てくる牛肉の切れ端が最もおいしいと信じているので、いつもきれいに最後まで
絞り出しますが、この材料を使うと簡単に中身が残らず出てくることが予想されます。

 そこで、先ほどの特許出願ですが、森永が「カップ状容器の蓋体」と自社の事業
分野に限定して特許を取得しているのに対し、東洋アルミニウムは「積層体及び
包装材料」として出願しています。共同研究を行う場合は共同で特許出願を行うのが
普通と考えられますが、各社が個別に出願を行っている点や特許の範囲の相違等
から、そのようにすることが予め合意されていたのかもしれません。すなわち、森永は
自社製品で使いながら同業他社のダノンや明治乳業に対して牽制力を持つ一方で、
東洋アルミニウムはハウス食品や大塚食品(ボンカレー)等の他の需要者に対して
自由に採用を持ちかけることができるようにしたのかもしれません。

 さて、このビヒダスの蓋裏の撥水性はとても強く、ヨーグルトが蓋裏で転がります
ので読者の皆さんも試してみると面白いと思います。私がヨーグルトを蓋裏に垂ら
してみた写真を弊所のホームページ(http://www.iipi.jp)に掲載しておりますので興味
のある方はご覧ください。

[CONTENTS] ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【1】知財トピック  −  RC TAVERN事件 − (ぴ)

【2】お知らせ/イベントご案内
 (1)発明教室開催のお知らせ
 (2)無料発明相談会(山口県発明協会主催 当方担当分)

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【1】知財トピック   − RC TAVERN事件 − (ぴ) 
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(1)弊所では、特許事務所としての実力向上のため、定期的に判例勉強会を開催
しています。
 例えば最近の勉強会では、「プロダクト・バイ・プロセス事件」(知財高判平24.1.27)、
「地球儀型トランジスターラジオ事件」(最判昭44.10.17)、「インクタンク事件」(最判平
19.11.8)が採り上げられました。

 今回、私が担当でしたので、メルマガでもその内容をお伝えします。

(2)事案
 某有名飲料メーカーの子会社であるXは、その飲食店「RC TAVERN」の
店舗オープンにあたり、「ぐるなび」や「日経MJ」に店舗情報を掲載し、
パンフレットを3.5万枚配布するなど、宣伝広告活動を行いました。
 特に「ぐるなび」では約3週間で1万回ものアクセスがありました。

 ところが、飲食店「RC TAVERN」のオープンからわずか23日後に、
Yは、「アールシータバーン」(第43類・飲食物の提供)の商標登録出願をしました。

 このYは、個人でありながら、1年半の間に実に45件もの商標登録出願を行って
います。
 その内容は、飲食物の提供、広告経営診断、建物の賃貸の代理・媒介、美容、
介護など多岐にわたっており、一貫性がありません。そのうち30件は、第三者が
実際に使用している商標でした。
 このように、Yは、多数の商標登録を有しているにもかかわらず、未だ登録商標を
指定役務やその他の業務に使用しておりません。

 この状況で、Yの「アールシータバーン」の商標は商標登録されてしまったので、
Xは、その商標登録を無効にするため、特許庁に商標登録無効審判を請求しま
したが、認められませんでした。
 このため、Xは、知的財産高等裁判所に審決取消訴訟を提起しました。

(3)判決
 裁判所の判断では、以上のような事実認定をし、また出願日が接近していることや、
「RC TAVERN」と「アールシータバーン」の類似性を認めました。
 その上で、裁判所は、Yは「他者の使用する商標ないし商号について…多岐にわたる
指定役務について商標登録出願をし、登録された商標を収集しているにすぎない」
と断じて、Yに「アールシータバーン」の商標を将来その業務に係る役務に使用する
意思があったとは認め難いとし、商標法3条1項柱書違反の無効理由があるとして、
特許庁の審決を取消す旨の判決を下しました(知財高判平24.5.31平24(行ケ)10019)。

(4)コメント
 業務を行っていない個人が45件もの商標登録を短期間に行い、しかも既に第三者が
実際に使用している商標と同様のものが30件も含まれているとすれば、
商標ブローカーの疑いが掛けられもやむを得ないと思います。
 このような事例において将来に商標を使用する意思がなかったことを認めた
という点では、珍しい判決だと思われます。

 しかし、この事案は少々特殊な事例でもあるといえます。もし商標コレクションが
僅かであったならば、同様の結論になったとは限らないといえます。
 あくまでも商標登録は先願主義で早い者勝ちですので、商標登録は早めに
済ませて独占使用権を確保するのが肝要だと思います。(ぴ)

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【2】お知らせ/イベントご案内
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◆◇(1)発明教室を山口県でも開催します!◇◆
 維新国際特許事務所では、以下のとおり山口市にて「発明教室」を開催致します。
発明してみたいという方、発明は初めてでよくわからないという方、頭の体操と
してやりたいという方、特許のライセンス契約に興味がある方などのご参加を
お待ちしております。3回が1セットのセミナーとなっています。

日程:第1回 9月13日(金)、第2回9月20日(金)、第3回10月4日(金)
時間:14:00〜16:00(13:45から受付)
会場:ニューメディアプラザ山口ビル 6階 会議室
(住所:山口市熊野町1−10)
受講料:各回1,000円(税込)
定員:20名
申込方法:下記のお問合せ先に電話もしくはメールでお申し込みください。
メールには、お名前と電話番号をご記入ください。
お問合せ:維新国際特許事務所 電話:083-901-2233  e-mail:info@iipi.jp
詳細は、弊所ホームページ(http://www.iipi.jp)に紹介しておりますので
宜しければご覧ください。

◆◇(2)無料発明相談会(山口県発明協会主催 当方担当分)◇◆
ご相談に際しましては必ずご予約をいただけますようお願い申し上げます。
平成25年度も、ご予約がない場合には相談会が開催されませんので、
ご注意をお願い申し上げます。
 平成25年9月18日 (水) 13:00〜16:00  (一社)山口県発明協会
 平成25年10月23日 (水) 13:00〜16:00  (一社)山口県発明協会
(山口市熊野町1−10 ニューメディアプラザ山口ビル10F  電話:083-922-9927)

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メルマガを最後までお読みいただいてありがとうございました。
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コラムや知財トピック、ひと歌詞についての寄稿もお待ちしております。
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事務所メンバーによるものを意味しています。
それでは、次回をお楽しみに。
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