今年のサマーインターンシップも山口県インターンシップ推進協議会様と協力して開催することになり、山口東京理科大学3年の永井陽さんと山口大学国際総合科学部3年ルードウィッグ佳奈さんのお二人に参加いただきました。

 今年もインターン生の方々には出願書類である特許明細書の作成に挑戦していただきました。初めのうち、教えている側も「大丈夫かな?」「本当に課題を全部こなせるのかな?」と内心ヒヤヒヤ、ドキドキしていました。しかし、そこは現役の大学生、最後のラストスパートは見事で、二人とも最後まで課題をやり遂げました。まだまだ荒削りの部分は沢山ありますが、しっかりと発明の特徴を理解し、出願書類の様式を守り、その中に独自の工夫や視点を入れ込むことができていました。初めてのことに果敢に挑戦できる二人の今後がとても楽しみです。

写真は、最終日にインターンシップ修了証を手渡した後のスナップです。

恒例によりましてインターン生の感想文をいただきましたので掲載させていただきます。

【永井陽さん】 
 私は、理系の学生であり、ほかの文系の方ほど文章や知的財産のことに詳しいことや、専門的な分野を除いて文章を扱うことは得意というわけではなかった。また、弁理士の仕事というものは理系の分野の最高難易度の資格という程度の知識しかなかった。加えて申し上げるなら、特許は発明者および/または出願者が申請に関して面倒な手順を省くための機関に過ぎないものと思っていた。実際にレクチャー・作業をしてみると、特許事務所では特許、実用新案、意匠等の内容を扱うことが分かった。提出書類には決まった書式(願書、特許請求の範囲、明細書、図面、要約書の5種類)があり手順も費用も精錬されているとはいえ煩雑に感じた。最初のレクチャーを受けているときはまだ便利屋程度の意識でいたが、実際に特許請求の範囲と明細書を記述しているときにこの意識は変わった。特に、特許請求の範囲というものはその請求項を書く際にプロトコルがあり、この範囲を広げるために請求項作成者は奔走するわけだが、予備知識のないものはここで挫折する。実際に、請求項担当者に何度も自分のものの添削を頼んだところ、私の書いたものは2割も伝わらなく、何度も脱走を試みようと心の中で企てるほどであった。実際に、弁理士を登用しなかった先行文献を確認したところ、請求項が1つしかなく発明というより製法であった。これに比べ弁理士を登用した場合、請求項の記載が抽象的であるものの、どういったものかイメージすることができた。明細書も同様に最初に記載する発明の説明は範囲が広く、最後に書く実施例は事細かく書くようになっており、これも所定の形式がありこれらの文言を考えるのに苦労した。また、実際の発明品またはその図面を見てどのような効果があるか考え、権利の範囲が大きくならないかどうか考えなければならない。このとき、出願者や発明者の意図とはそぐわないこともある。このことから記載する者は発明の一端を担うことになる。常に、出願の特許請求の範囲を広げられないか考える、または、先行文献を見て発明のどの部分が違うのか、進歩性はあるのか、そういった観点で見るのは非常に有意義であった。

 これらの記述をマスターするのに5年ほどかかると言われ、その内容に大きくうなずくとともに私の心の中で特許事務所というものの考えは変わった。基礎技術やその応用による発明も重要だが、それらを守る方法は、ただ単にその旨を記載するだけでなく、記述の方法によってその範囲を大きく見せることが可能でそれに通じた文章のプロがいるということである。また、いろいろな発明に触れることができるので非常に面白く、この仕事は物や方法がどんな構造をしているか考えるという点でしてみたいという気持ちになった。知的財産の分野だけでなく法を用いてあらゆる物事を保護するという仕事がないか探してみたいと思った。

【ルードウィッグ佳奈さん】
 まず、井上さんをはじめとする事務所の方々には期間中、大変お世話になりましたことお礼申し上げます。事務所の運営が忙しい中、私たちインターン生のために時間を割いていただき、特許出願のしくみや、明細書の書き方を細かい部分までレクチャー、添削していただきました。

 私は将来、知的財産を扱う職に就きたいと漠然と考えていて、実際にお仕事をされている現場にお邪魔しようと思い、維新国際特許事務所さんでインターンシップをさせていただくに至りました。海外留学を通じて日本との知的財産の考え方の違いに驚き、国を超えての特許申請に興味を持ったことも、維新国際特許事務所さんを志望した理由の一つです。山口大学が知財教育に力を入れていることもあり、私には入学してから知的財産に関して学ぶ機会が多くありました。しかしそれは知識としての学びであり、実際社会でどのように役に立つのか想像もできませんでした。それが、いざインターンシップが始まると、事務所の方々のわかりやすい解説と自分で明細書を作成するという実践の中で、知識が形となって繋がるのは何とも楽しかったです。

 明細書を書く際にはたくさんの決まりごとがあり、先行事例の検索もすべて手作業で、これを仕事にしている方々は大変だと感じました。誰が見てもわかる、再現できるための書類ゆえ、自分ではあたりまえだと思っていることも言葉にする必要があります。また、誤解を避けるため、文の主語を省かないよう注意も必要です。自分では細心の注意を払って作成した明細書も、いざ確認していただいたときは必ず落ち度が見つかり、厳しい社会だなと感じました。万全を期したつもりで臨んだ最終発表も、やはりたくさんのミスを指摘していただきましたが、根本的な考え方は間違っていなかったようですし、アイディアを評価していただいたことは嬉しかったです。

 インターンシップを終えて、改めて知的財産に関する仕事に興味を持つことができました。5日間という短い期間ではありましたが、特許についてはもちろん、他にも大切なことをたくさん教えていただいたように感じています。特にインターンシップを担当していただいた渡邊さんに、インターンの枠を超え、人生の設計に関して社会人としてアドバイスいただける機会を得られたのは貴重な経験です。内容に少々満足できなくても、期日までに仕事を完遂することが大切だ、と言っていただいたことも、内容にこだわりすぎる私には響き、あたりまえのことでも肝に銘じておこうと思いました。

 最後に、改めて事務所の方々、お世話になりました。ここで学ばせていただいたことはしっかり自分の糧にして前に進んでいきます。そして、資格を取ることができたら、就職先が決まったら、また報告に伺います。ありがとうございました。

2018 Internship Photo